リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

尖閣諸島の死角

 昨日公開した記事「尖閣諸島沖での日中対立について」は、はてなブックマークライブドアBLOGOS、Yahooトピックスで大きなご反響を頂きました。ありがとうございます。

 今回は補足的に尖閣諸島の防衛について1点だけ補足です。尖閣諸島の警備体制についてです。

今回の事件がひとまず沈静化したなら、できるだけ早めに尖閣諸島の警備体制を強化する必要しておくべきでしょう。それは尖閣諸島の実効支配を確かにして、同様の事件の再発を防止するとともに、また事件が発生した際にすばやく、的確な対応をとれるようにするためにも、海保・自衛隊双方について警備体制の強化が課題となります。

海保による警備

 尖閣諸島では以前にも中国の海洋調査船の侵入を許すなど、色々な事態が発生しているため、海保の警備能力の向上がはかられてきました。しかしまだまだ十全とは言い難いようですし、有事をにらんだ自衛隊の警戒体制についても同様です。

 海上保安庁による尖閣諸島警備は、現在どのように行われているのでしょうか? 著名で信頼性の高い軍事サイト「北大路機関」様の解説によると「現時点では警備救難体制の空白地帯といわれるほどで、巡視船が常時展開している程度である」とのことです。具体的には海保石垣島基地の航空部隊と、ヘリコプター搭載の大型巡視船(PLH型)2隻の常時配置で警備されているそうです。

 仮にこれを抜本的に強化するなら、どのような施策が考えられるでしょうか? 沿岸警備隊の専門サイト「蒼き清浄なる海のために」様によれば、例えば下記のような手段が考えられるそうです。

上空からの監視能力強化
・長時間滞空が可能なUAV(USCGがグローバル・ホーク、USCBP米国勢間国境警備局がプレデター及びエルメスを導入)
・監視用飛行船(USCBPや空軍・州兵航空隊が監視に使用)


尖閣諸島、特に魚釣島に監視機材を設置
・対水上レーダー施設(国内では一部の原子力発電所の警備で海保が陸上に設置された対水上レーダーを使用している)
・陸上設置型レーザーレーダー(ODAマラッカ海峡警備用にインドネシアへ提供)
・陸上設置型水中セキュリティセンサー(海保が東大と共同開発に成功。洞爺湖サミット警備で使用)

海保警備の死角と対策-蒼き清浄なる海のために

自衛隊による警戒

 また尖閣諸島の警戒態勢については、自衛隊にも強化すべき…というか、いま空いている穴を埋めるべきポイントがあるようです。もと空自幹部の久遠数多さんによれば、尖閣諸島をふくむ南西諸島先端部の防空体勢には懸念があります。

それよりも更に問題なのは、与那国だけでなく、尖閣上空なども含めて「見えないし、間に合わない」と言う事です。


言うまでもなく、これは与那国に一番近いレーダーサイトが宮古島であり、スクランブル発進する飛行場が那覇だということです。
レーダーサイトが遠すぎるため、高高度でも近くに来てからでなければ見えないし、低高度であれば全く見えません。
レーダーサイトの情報を元にスクランブル発進させる基地は、宮古島よりも更に更に遠い那覇です。


対比の例としては北方領土を挙げる事ができます。
北方領土では、千歳は遠いものの、レーダーサイトは根室と網走にあり、上空は非常に良く見えてます。


ADIZ再設定よりもサイトの建設を考える方がより重要です。

与那国島上空のADIZ再設定は大したニュースじゃない: 数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感

 とのことで、レーダーサイトの建設や、また現在検討が進んでいる先島諸島への自衛隊部隊の駐屯を含め、警戒態勢の強化が求められるでしょう。わけても具体化が進んでいる「与那国島への陸上自衛隊の配備」については、また改めて書きたいと思います。

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尖閣諸島先島諸島などの島々でもしも紛争が起こった時のために新設された自衛隊の「西普連」を取材した本です。