リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

アメリカ空軍のジェット戦闘機が、今年もサンタさんを追跡!

 発展した軍事技術は、はるかな高空や衛星軌道上までもをその射程に収めました。衛星軌道上のスパイ衛星、地上のレーダーら高度な警戒システムを有するアメリカ空軍は、毎年かかさずサンタクロースの追跡にあたっています。

北米の防空司令部がサンタ情報をお届け

だれも知らないサンタの秘密

 サンタさんと言えば、何故か必ず子どもが寝静まった後に飛来することで知られています。いったい、サンタさんは今何処を飛んでいるの、ちゃんと来てくれるの、と気がかりでなかなか眠れぬ子どもは少なくないでしょう。

 かかる要望に答え、アメリカ空軍は毎年かかさずサンタの飛行を追尾。世界中からの問い合わせに応じ、その現在位置をリポートしています。作戦にあたっているのは北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)。アメリカ軍とカナダ軍が協同で運営する司令部であり、アメリカ大陸北部の空と宇宙を24時間体制で監視しています。監視対象は核ミサイル、スペースデブリ、戦略爆撃機ら北米に空から迫る脅威と、あとサンタさんなど。

 しかし、サンタクロースを捉えるのは至難の業です。なにせ彼ときたら、子どもが起きている間には絶対来ないくせに、朝起きたらいつの間にか来ているという謎の存在です。いったい、北米航空宇宙防衛司令部、通称ノーラッドは、いかにしてサンタクロースを捕捉しているのでしょうか??

スパイ衛星、レーダー、ジェット戦闘機……サンタ監視に使用される装備

技MIX航空機 AC06 航空自衛隊 F-15DJ 第306飛行隊 (小松基地)

 司令部の公式サイトによれば、サンタ追跡作戦はさまざまな装備のリレーによって行われます。

 まず使われるのは、「北米警戒システム」と呼ばれる強力なレーダー網です。地上に設置された47の施設で構成されるレーダー網が、サンタが暮らしていると思われる北極方面の空を厳重に監視します。サンタがトナカイのそりに乗って離陸したならば、たちまちこのレーダーにひっかかるという寸法です。

 サンタの離陸を確認したならば、次はスパイ衛星の出番です。地球の上空約3万6千km の軌道上から、トナカイの赤鼻が発する赤外線をキャッチします。これによって北極から飛来するサンタの現在位置を追尾するのです。

 サンタが北極上空を離れ、カナダとアメリカの領空へと接近したならば、お次は戦闘機の出番です。たちまちスクランブルしたカナダ空軍のCF−18戦闘機と、アメリカ空軍のF−15およびF−16戦闘機が、サンタクロースに接近し、北米まで迎え入れます。

 ついに到着したサンタの様子は、この日のためだけに設置されているハイテクの高速撮影設備「サンタ・カメラ」によって撮影され、世界中に配信される予定です。北米航空宇宙防衛司令部(ノーラッド)の特設サイトでは、去年のクリスマスに撮影成功したサンタクロースの貴重な飛来シーンが公開されています。

解き明かされたサンタクロースの謎

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 過去50年にわたって毎年実施されてきたサンタ追尾作戦の結果、北米航空宇宙防衛司令部(ノーラッド)はサンタクロースについて様々な情報を入手し、数々の謎を解き明かしたようです。そのデータは惜しげもなく公開され、いくつもの疑問に答えを出しています。その一端をみてみましょう。

サンタはどんなルートを通るの?


通常、サンタは太平洋上の日付変更線からスタートして西向きに移動します。


歴史的に見ると、サンタは南太平洋を先に訪問し、次にニュージーランド、オーストラリアの順に回ります。その後、日本に向かって一気に北上し、アジアを巡り、アフリカを横切り、西ヨーロッパ、カナダ、アメリカ合衆国、メキシコ、中央アメリカ、そして南アメリカと進みます。

Official NORAD Santa Tracker


 そのようにルートがわかっているのであれば、ノーラッドの戦闘機はすでにサンタと遭遇したことがあるのでしょうか?

過去 50 年以上にわたり、私たちのジェット戦闘機(F-16F-15、CF-18)は何度もサンタと遭遇しました。ジェット戦闘機がサンタと遭遇すると、翼を傾けて「やあ、サンタさん! NORAD は今年もまたあなたを追跡するよ!」とあいさつします。すると、サンタはいつも手を振り返してくれます。サンタはパイロットを喜んで迎えてくれますよ!

Official NORAD Santa Tracker


 では、なぜ子どもたちは毎年待っているのに、サンタさんを目撃することができないのでしょう? ノーラッドに聞けば、何時ごろサンタが来るか教えてもらうことはできないでしょうか。

NORAD はサンタを追跡しますが、実際のルートはサンタだけが知っています。ですから、私たちはサンタがいつあなたの家に来るか予想することができません。これまでの歴史から、サンタが各家庭を訪問するのは子供たちがぐっすりと眠っている間だけのようです。ほとんどの国では、サンタが来るのはクリスマス イブの夜 9 時から真夜中にかけてですが、そのときに子供たちがまだ起きていれば、サンタは先に他の家を回ります。そしてまた後で戻って来るのです。でも、子供たちが眠っているときだけです!

Official NORAD Santa Tracker

 これはちょっと残念なことですね。結局、夜中まで起きていてもサンタに会うことは叶わないようです。でも、サンタの現在位置はノーラッドが常時追尾していますから、聞けば教えてもらえます。

空軍基地に設置される「サンタ・ホットライン」で、問い合わせに回答

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 サンタ追尾の日、アメリカ空軍の基地には、休みを返上してボランティアで参集した空軍の将兵、ならびにそのご家族・ご友人の皆さん、約1250人が備えています。1日限り設けられる「サンタ・ホットライン」の電話番号にかければ、このセンターにサンタの現在位置を問い合わせることが可能です。昨年は世界中からの7万4,000件の問い合わせに答えたそうです。

 サンタ・ホットラインは、1955年に始まりました。スーパーが子ども向けのキャンペーンとして、サンタにつながる電話番号だよ、という企画をうちました。しかし広告に載っていた電話番号は間違っており、ここに電話をかけようとした子どもが誤って、くだんの司令部の司令官であったシャウプ大佐につながってしまいます。

 司令部の赤電話が鳴り、どこの将軍からの電話かと思って受話器をとった大佐は「はい閣下、こちらシャウプ大佐であります」と答えました。すると電話口から「あ、あなたが本物のサンタクロースですか?」と声がする。誰かのジョークかと思って部下と顔を見合わせた大佐でした。しかし子どもの声で「あの、本当にサンタクロースですか?」と繰り返し聞かれたので、何の間違いか、子どもからの本気の問い合わせかと察して、自分の身元を話し「レーダーで調べた結果、サンタは北極から南下した形跡がみられる」と回答したと伝えられています。その後さらに問い合わせがあったら、同様にサンタの現在位置を調べて教えてあげるよう、部下に命じたそうです。

シャウプ大佐

  以降、サンタホットラインは毎年の恒例行事となりました。シャウプ大佐は昨年亡くなられたそうですが、今年もサンタ追跡ならびにサンタ・ホットラインは行われます。パソコン上のグーグルアース、携帯電話のグーグルマップとも連携して、サンタの現在位置を伝えます。またTwitterにも公式アカウントが設置されており、24日にはサンタの位置情報をtsudaってくれるものと思われます。

 ノーラッドのサンタ追跡公式サイトには他にもさまざまなコーナーがありますが、その中に「サンタは実在するの?」という疑問に答える一節があり、こう書かれています。

多くの歴史的データと 50 年以上にわたる NORAD の追跡資料から導き出される結論は、サンタクロースが実在して、世界中の子供たちに心から愛されているということです。

Official NORAD Santa Tracker

なお、このプロジェクトにかかる経費は税金ではなく、全て寄付とボランティアの協力で賄われているそうです。


サンタ追跡プロジェクト 日本語サイト