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リアリズムと防衛ブログ

防衛ってそういうことだったのかブログ。国際関係論や安全保障論について、本の感想などを書いています。

クリミア議会がロシア連邦への編入を要請

時事 ウクライナ危機

クリミア議会がロシア入りを要請しました。 いずれ予期されていたことでしたが、早すぎた、拙速だったのではないかと思います。 3月6日付のロシア紙によれば、クリミア議会はウクライナからの分離と、ロシアへの編入を決めたと報じられています。

The parliament of Crimea, a majority ethnic Russian region within Ukraine, decided Thursday to secede from the country and become part of Russia, according to a statement on its website.(引用元

BBCによれば、クリミア議会はロシア連邦に対して正式に加入の申し出を行ったと発表したそうです。連邦入りを認める手続きに入ってくれるようロシアに要請したものの、プーチン大統領からはまだ公式な返答はない、とのこと。

The Crimean parliament resolved "to enter into the Russian Federation with the rights of a subject of the Russian Federation". In a statement on its website, parliament said it had asked Russian President Vladimir Putin "to start the procedure" of formally allowing Crimea to join the Russian Federation. The Kremlin said President Putin was aware of developments in the Crimean parliament, but no response has yet been made public.(引用元

クリミアはウクライナの一部ではありますが、歴史的な経緯から「自治共和国」の地位を有しています。また、ロシア連邦には民族自治が認められている多数の共和国があります。クリミア議会の要請が入れられれば、クリミアはある程度の自治権をもつ共和国の地位をそのままに、ウクライナからロシア連邦へ属する先を変えることになるでしょう。 いずれはそうなる、と予想していましたが、今月末の住民投票の結果をもって民主的正当性を整えた上で、独立宣言なり連邦加盟の要請なりするのが常道というもの。もしかすると、これはクリミア議会の先走りであって、ロシア側のシナリオとは相違しているかもしれません。 これまでの記事で書いた通り、ロシアとしては対話ムードを演出して事態を固定化しつつ、月末の住民投票を待てばよい情勢でした。

ウクライナは、状況を打開したければクリミアからロシア軍を排除し、租借地の中へ押し返す必要があります。……ウクライナ軍がクリミアに進軍したとして……ロシアに「ほらみろ、クリミア市民は武力によって自由意志を奪われようとしている!」という大義名分をプレゼントすることになるでしょう。その時こそ、ロシア軍はクリミアに留まらず、東部ウクライナに侵攻するかもしれません。……かといって事態が膠着すれば、戦わずしてロシアの勝利です。 期限はクリミア共和国で住民投票が行われる3月末。そこでは「事実上の(ウクライナからの)独立」が問われます。そのときロシアは無血で、民主的に、クリミアを手中にできるでしょう。時はロシアに味方しています。(「3/4 戦時態勢に入ったウクライナは勝てるのか?」
ロシアとしては、このままクリミア半島だけを切り取るも良し。分裂を避けたいウクライナ新政権が、親欧路線を捨ててロシアの勢力下に戻ればさらに良し、ではないでしょうか。 このままいけば、恐らく戦争は起こらないでしょう。ロシアはその軍事力を、十分なインパクトを生むほどには威嚇的に、かつ欧米に対抗介入を躊躇わせる程度には抑制的に用いるでしょう。(3/2 『「ロシアが軍事介入」のインパクト』
ウクライナ側がクリミアに進軍せず、東部国境の防衛に集中するなら、ロシアはドイツなどが働きかけている対話枠組みに乗っかって、コミュニケーションを増進しつつ、事態の沈静化、いいかえればロシア勝利での固定化をはかるのではないでしょうか。(3/5『「ロシア軍をウクライナに送る必要はまだ無い」とプーチンは述べた』)

よってロシアとしては、クリミアへの派兵については「いや、あれは自警団だ」という建前を唱えつつ、ドイツらの親ロシア姿勢の国を介して対話を開始すべきフェーズです。ここでキエフのウクライナ新政府と対話を重ね、ウクライナ東部侵攻の可能性を匂わせて脅迫しながら、時期をみて東部侵攻案の放棄および経済援助案等の融和策を持ち出すのが自然な行動です。

 

そして引き換えに、クリミアの分離をウクライナ自身に認めさせられれば、ほとんど最上の勝利を手にできます。 しかし、いまの時点でクリミア議会の申し出はロシアの侵略をかえって強調してしまい、ウクライナおよび欧米の態度をいたずらに硬化させる恐れがあります。このクリミアの動きによって、ロシアにとって望ましい結果へはかえって回り道になるかもしれません。