リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

「核の傘」を日米間で具体的に協議

核の傘について明文化することで、その実効性を高める動きがあるようです。

同盟諸国の頭上には「核の傘」がかかっている

日本や韓国といったアメリカの同盟諸国は、アメリカが提供する核の傘に守られています。同盟諸国は自前の核抑止力を整備せずに、アメリカと同盟することでアメリカの核抑止力の恩恵に預かっているわけです。核武装をしているイギリスやフランスでさえも、アメリカの核戦力とリンケージすることで、自国民を核の脅威から守っています。

韓国に対して「核の傘」を明文化

先月の米韓首脳会談において、アメリカは韓国への核の傘の提供を明文化しました。

緊張を高める北朝鮮の行動を踏まえ、米国による「核の傘」提供が、米韓首脳会談の公式文書では初めて明文化された。

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これは北朝鮮の核開発を受けて、アメリカが韓国を守ることを一層はっきりと示すためといわれています。同盟諸国が核の脅威を受けて不安がるのを放置すれば、アメリカとの同盟への信頼性がゆらぎ、悪くすれば自前の核武装に走りかねません。それはアメリカにとって大いに損です。アメリカの威信と発言力は低下し、地域が不安定化するからです。だから「核の傘」の実効性を強化して韓国を少しでも安心させておく方がよい、ということでしょう。

日米間でも「核の傘」の具体的協議が行われる見込み

北朝鮮の核開発を受けて「本当にアメリカは守ってくれるのか?」「自前で核武装が必要じゃないの?」という意見がでてくるのは、韓国だけではありません。日本においてもそうです。

そこで日米間でも「核の傘」の具体的運用について踏み込んだ協議が行われる予定だそうです。

日米両政府は7日までに、北朝鮮の核実験やミサイル発射を踏まえ、米国の「核の傘」による「拡大抑止」やミサイル防衛(MD)、在日米軍再編など両国の安全保障問題について、月内に協議する方向で検討を始めた。

国防総省は…日本に対しても核兵器による抑止力と、その運用について説明するとみられる。

時事ドットコム

核の傘」の下で暮らしてきた「核兵器アレルギー」の日本

とはいえ、「核の傘」は冷戦時代から何十年もの間、日本に提供されてきました。それなのに運用まで踏み込んだ協議が今までなかった。これは不思議なことです。高峰康修氏によれば、ヨーロッパ諸国に対してアメリカは核の傘の具体的運用の協議をもっているそうです。それなのに日本とアメリカの間にそのような協議が無かった、その原因の一つとして、日本側の拒否感があるそうです。(むろんそれだけが原因ではないでしょうが)

我が国で「核の傘」の運用に関する協議が行われてこなかったのは、国民に核兵器への抵抗感が強く、野党の強い抵抗が予想されたからだと言われる。論理的に考えれば、それならば「核の傘」などに依存するのは偽善的かつ欺瞞的ということになってしまう。

高峰康修の世直し政論:「核の傘」に関して史上初の日米協議開催へ−日米同盟史上極めて重要な意義

また、高峰氏はこれから設けられる協議の重要性を指摘しています。

これは、日米同盟史上、極めて重要な意義を持つ。ことによると、後世、日米間での安全保障に関する協議の中で最重要のものであったと評価されるかもしれない。それぐらいに価値のあることである。

高峰康修の世直し政論:「核の傘」に関して史上初の日米協議開催へ−日米同盟史上極めて重要な意義

これまでの日本は、核兵器運用面で協議をアメリカと持たなかったというだけでなく、国内的にも「核の傘」を直視しないできた面がありました。(例えば、核兵器を嫌悪し将来の核廃絶を目指すことと、現在の世界平和と自分たちの安全を守っている核兵器の効果を認めることは、何ら問題なく両立するはずなのですが…みたいな)そのような意味で、これからの協議は安全保障の面だけでなく、「核」についての国内的な議論にも資するものがあるかもしれません。