リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

サムライの武器はどう変わったか? 「騎兵と歩兵の中世史」近藤良和著

騎兵と歩兵の中世史 (歴史文化ライブラリー)
近藤 好和
吉川弘文館
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おすすめ度の平均: 4.0
4 中世武器・甲冑好きの必読書
4 研究者にオススメ

 サムライ、武士の武器といえば何と言っても「刀」のイメージがありますが、もともと武士のメインウェポンは「弓」の方だったことはわりと知られています。いわゆる日本刀を二本ざしして、徒歩で使う剣術に優れた武士は、戦争がほぼ無くなった江戸時代のイメージです。そもそもの武士は馬に乗り、弓をひいて戦っていたことから、武士の道のことを「弓馬の道」といいます。

 つまるところ、初期の武士とは弓騎兵です。アラブやモンゴルの弓騎兵と比べると鎧が重装備ではあります。とはいえメインウエポンは弓を使い、太刀は主に落馬後の組討に使用していたようです。

 武士の戦闘法は、時代が下るに従い、武具の進化とともに変わっていきました。弓の射程が延び、また戦法が集団戦となり、ゲリラ戦・攻城戦がふえるなどの影響からか、次第に騎射から歩射へ、弓から打物への移行がみられます。

 そういった中世期の戦技の変化を、史書と武具の研究から明らかにしたのがこの本「騎兵と歩兵の中世史」です。目次を以下に引用しておきます。

  1. はじめに
  2. 中世前期の騎兵と歩兵
    1. 中世前期戦闘考察の史料
    2. 『今昔物語集』の戦闘
    3. 平家物語』の戦闘
  3. 古代の騎兵と歩兵
    1. 弓射騎兵の伝統
    2. 律令制下の騎兵と歩兵
  4. 中世後期の騎兵と歩兵
    1. 中世後期戦闘考察の史料
    2. 太平記』の打物戦
    3. 太平記』の弓箭戦
    4. 太平記』の組討戦
    5. 室町期以降への見通し
  5. おわりに

 私は馳組戦への興味からこの本を手に取りました。本文ではどちらかというと騎射から打物への移行に重点がおかれており、特に南北朝期に登場した打物騎兵に大きな意味を見出しています。なので当初の関心とは若干違った内容ではありましたが、しかし面白かったです。

 いつの時代であれ、兵器、戦技、戦術は連動して変化していくものですが、武士の戦法にもそれが生き生きと見られるのですね。

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「騎兵と歩兵の中世史」は古代〜鎌倉〜南北朝までを扱った本ですが、戦国時代についてはこちらの本で要点がわかりやすくまとめられています。