何ごとにも、起源と歴史があるものです。また、人類の歴史は戦争の歴史といいます。
だから、意外なものの起源が戦争につながっていたりします。例えばインターネットです。
インターネットと核戦争
インターネットの起源は1969年。核戦争を戦うために作られました。
核兵器を投げ合う戦いでは命令を一瞬で伝達して攻撃できることが大事です。
味方の拠点1つや2つが敵の核攻撃を受けて蒸発しても、生き残りは連絡をとりあって、すぐ反撃せねばなりません。
よって高速で、分散した通信網の開発がスタートし、インターネットの起源になりました。
弾道ミサイルも衛星打ち上げも似たようなもの
核戦争の恐怖を生み出したのは核ミサイルですが、その起源は宇宙旅行です。
地表を核で焼きつくすためのミサイルも、その起源はというと、人を月へ運ぶという夢のロケットでした。
ロケットに人を乗せれば宇宙旅行になり、人工衛星を乗せれば打ち上げになり、爆弾を乗せればミサイルになりました。
だから現代でも、気象衛星の打ち上げだろうが、弾道ミサイル発射だろうが、モトの技術は近いのです。
(ただし全く同じではないので、日本が弾道ミサイルをすぐ作れるかというと、さにあらずなのですが)
最初のロケット
ちなみに最も原始的なロケットを作ったのは漢民族。これは13世紀という人が多いです。
といっても近代ロケットのような大型ではありません。火箭(かせん)と呼ばれる火薬兵器で、今でいうロケット花火のようなものだったようです。ごく原始的な地対地ロケット兵器ですね。
現代人でも、ロケット花火が何十発もヒュンヒュンと自分めがけて飛んできたら、怖くなって逃げ惑ってしまうでしょう。漢民族は、このロケット花火の乱れ打ちで、モンゴル騎兵と戦ったそうです。
腕時計で一斉突撃
ロケット打ち上げといえば「3…2…1…発射」の秒読み。正確なタイミングが必要なのは戦争も一緒。だから腕時計が普及したのは第一次世界大戦がきっかけです。(発明はもっと前でしたが)
当時の戦争は、塹壕という穴の中から、大勢の歩兵が一斉に飛び出し、敵の陣地へまっしぐら。一斉にやるから意味があるので、一人だけ飛び出したら狙い撃ちです。
「3…2…1…突撃!」とタイミングを合わせるため、小型で、携帯でき、スグに見られる時計が必要でした。よって腕時計が大量生産され、普及したそうです。
アクアスキュータムのトレンチコート
ちなみに第一次世界大戦といえばトレンチコートの普及の契機でもあります。
これで有名なのが、先ごろ倒産したイギリスのスーツブランド「アクアスキュータム」。同社は地面に掘った塹壕で暮らす兵隊のために、雨水に強いコートを作って、大流行したのでした。
だから「トレンチ(塹壕)コート」です。
(@Rosocodayoさんにご教授頂いたところ、一次大戦の前のクリミア戦争の時点で、かなりトレンチコートが普及していた模様です。英露の両軍が同じトレンチを着ていて、見分けがつかなかった、という話があるとか)
スーツスタイルでいえば、スーツのベンツをサイドに切るのは、もともと軍服から来ているという話もあります。当時の軍人は腰にサーベルをつっていたので、剣を抜けるようにサイドにベンツを切ったのだとか。
ナポレオンの缶詰
缶詰、ビン詰で食料を保存するのも、もともとは長期戦を戦うための軍用食料の手法でした。
これは19世紀、ナポレオンがロシアに遠征したころの話だそうです。ナポレオンが戦争に負けたのはクレープのせいですが、それまで勝てたのは缶詰のおかげもあったのかもしれません。
スパムメールは何故スパムなのか
缶詰は戦争に便利なもので、そのチャンピオンが「スパム」です。
現代では迷惑メールのことを「スパムメール」と言いますが、これは第二次世界大戦の缶詰が起源です。
大戦中のころ、ドイツ軍の潜水艦が貨物船をドンドンと沈めます。するとイギリスは食糧不足になって、アメリカから食糧援助を受けました。そこで大量に送られてきたのが、大量生産できてカロリーが高い肉缶「スパム」です。
いくら援助だからって、毎日三食ずっとスパムだったら飽きるでしょう。飽きるほどスパムばかり食べさせられたのがイギリス軍の兵隊さん。そのせいでイギリスでは「嫌になるほどスパム、スパムのくり返し。他に食うものがない」という印象が残りました。
これを戦後にコメディアンがネタにして「他のものが食べたいのに『スパム、スパム』と連呼され、結局スパムを食べることになる」というコントにしました。これのように同じものが連呼されて鬱陶しい、という連想から、迷惑メールがスパムメールと呼ばれるようになった、という説があります。(from)
もっとも異説もあるようですが、どっちにしろ、缶詰の方のスパムの会社が嫌がっているのは確かなようです。缶詰の方はSPAM。迷惑メールはspamと使い分けてね、とは缶詰会社からのお願いです。
クロワッサンはなぜ月型なのか
また古いところでは、クロワッサンの起源。1683年にトルコ軍がウィーンを攻囲した際のこと。
トルコ軍はウィーンの城壁を突破すべく、夜中に地面に穴をほりました。このままでは密かに地下道ができ、知らないうちに城内へトルコ軍が侵入してきてしまう・・・。
ところがザックザックという音を聞き咎めたの人がいて、これがパン屋さん。パン職人の朝は早い。早朝の静けさの中でパンをこねていたら、どうも妙な音がする…というので慌てて通報したそうです。おかげで地下道作戦を察知したウィーンの防衛軍が対抗策をとったので、ウィーンは危ういところで守られたそうな。
それを記念して、三角パンをトルコ国旗の三日月に見立て、トルコ野郎を食っちまえ、というのでクロワッサンの原型ができたのだ・・・という、由来譚があります。あくまで伝説ですが、早起きは三文の得どころかパン屋の早起きが国を救ったわけですね。
と、ここまでは、話の枕です。
戦争はどこから来たか?
このように色んなものの普及や発明が、戦争に起源しています。
では、戦争の起源はどこなのでしょう。戦争はいつ、どこから始まったのでしょう。
核兵器ができる前、銃が、火薬ができる前。剣と弓の時代。鉄が発明される前。青銅器や石器時代。
人類はいつから争っているのでしょうか。そして、いったい何故?
戦争の来歴を追うことは、あわせて、社会、思想や技術の変転に触れることでもあります。
時に、思想が社会を変え、社会が軍隊を変えました。そしてその軍隊が最も上手く使える兵器が活用された時、その思想、その社会の生き残りが決まりました。そして戦争が、そのように成形されました。
あるいは逆に技術が軍隊を変え、武力の持ち主を変え、やがて社会を変え、そしてそれら全てを正当化する思想が形成される、ということもありました。
そういう話を、ゆっくりしていきたいと思っています。