国際法の教科書です。国際法の基礎的理解を得るために有益な本でした。
本書の目次第1章 国際法の基本構造第2章 法源・慣習法第3章 条約法第4章 国家第5章 国家の主権と管轄権第6章 国家機関第7章 国際機構第8章 国家領域第9章 国際化地域・空間・宇宙空間第10章 海洋法第11章 外国人の法的地位第12章 人権の国際的保障第13章 国際経済法第14章 国家責任法第15章 国際環境法第16章 紛争解決第17章 国際安全保障法第18章 武力紛争法
集団的自衛権の成立過程
第17章から集団的自衛権の成立に関する部分を抜き出してみました。
…連盟期における戦争の違法化の過程でも、その例外としての自衛権の存在は広く承認されていた。しかし、それは必ずしも条約に明記されていたわけではなかった。…国連憲章の草案である1944年のダンバートン・オークス(DO)提案にも自衛権に関する規定は含まれていなかった。しかし、その後、ヤルタ会談で5大国の拒否権が認められたことなどを契機として、次のような経緯で自衛権に関する規定がサンフランシスコ会議において国連憲章に盛り込まれることになった。
すなわち、米州大陸では地域的連帯が進んでおり、1945年3月、共同防衛を規定する条やウを戦後に締結することを約束したチャプルテペック協定(規約)が採択された。しかし、憲章の草案であるDO提案では、集団安全保障の建前から、地域的取極・地域的期間による強制行動の発動には、安保理による許可が必要とされていた。しかもその後、ヤルタの密約(1945年2月)によって安保理の許可には常任理事国による「拒否権」が作用することになっていたことが公にされた。その結果、地域的な共同防衛体制を創設しても、拒否権によって安保理の許可が得られないために機能しない可能性が懸念されるようになった。さらに米州諸国は、国連に加盟することで、却ってその安全が保障されなくなる可能性を懸念し始めた。そこで、こおような共同防衛を自律的に機能させるため、緊急の必要に迫られて行う防衛行動には安保理の許可を必要としないことが合意され、それが国連憲章51条の規定となったのである。(p415-416)
このほか、色々な事柄がわかりやすく端的にまとまっていて、読み易かったです。