防災の日です。阪神淡路大震災が起こった時、もうこれ以上の災害を一生のうちに目にすることは無いだろう、と思いました。それは間違いでした。
大震災じゃなくても、台風や土砂崩れなど、いろいろな災害がこの国にはやってくるし・・・。そのために、いま、何をしておくべきでしょうか?
考えるきっかけをくれるのが「一日前プロジェクト」です。地震、津波、豪雨などさまざまな災害に遭った方々に「もし災害の一日前に戻れるとしたら?」というテーマで小さな物語を集め、発信し、共有するという企画です
被災者視線での短い体験談なので、読みやすく、いかにも身につまされます。このブログでは代表的なものをいくつか紹介させていただきます。ご興味をもたれたら、ぜひ元サイトをご覧になってください。一部を紹介します。
従ってこの記事には、災害を想起させる内容が多数含まれます。
災害対策ゼロの自分に気付かされる
例えばこういう体験談があります。東日本震災時のことです。
事務所でデスクワーク中、「地震だなー」と軽く思った次の瞬間にはこれまで体感したことのない信じられない揺れに・・・。
…急いでマンションに戻り、唖然・・・。
8階の部屋は玄関にひび割れ、部屋の中は食器棚からテレビ、本棚まで、事務所同様にメチャメチャな状態。…
その後は事務所で3日間過ごすことに・・・。
もし一日前に戻れたなら・・・。
間違いなく、家電、家具などの壁止め、ストッパーなどの転倒落下防止対策を施し、そして、保存食の在庫状況をチェックしていたでしょう。
災害時用ではなく、たまたま直前に買い込んでいたからこそ保存食に余裕があり、それが結果的に功を奏しただけ・・・。
災害時を想定し、備えるということを何もしていなかったことに初めて気付かされた今回の震災でした。
分かっていたけど、やらなくて後悔したこと
地震にそなえてこうしておくべき、と知ってはいても、やらずに済ませてしまう……という類のエピソードは数多く収録されています。思い当たることが多く身につまされる話です。(穴水市 60代 女性)平成19年能登半島地震
うちは畳の上にジュウタンを敷いていて、置いていた家具が全部倒れてしまいました。板の間に比べると畳は少しフワフワしているから、よけい倒れやすかったようです。
正直、地震なんて1000分の1も思っていませんでした。自分のところには地震は来ないと思っていたので、阪神・淡路大震災の神戸の人たちを気の毒やなあと思っていただけでした。整理ダンスの上とかに書類を入れたカラーボックスをいくつものせていて、息子から「地震がきたら全部落ちるぞ」と言われていたのに。
ちょっと周囲を見回してみて、せめて家具の固定や、高所に重いものをおかない、といった細々したことくらいは、欠かさずやっておきたいものですね。
ちょっとした備えで助かった
そういうちょっとした備えがあったご家庭の体験談を実際に読むと、うちでもやっておこう、という気持ちになります。
(仙台市青葉区 30代 女性)
信号も止まり、街中がまさにパニックに近い感じになっているなか、やっとの思いで自宅に帰ってきたものの、家の中はキッチンもリビングも物が散乱状態。
母とふたり、不安になりながら最低限の片づけをしている時に、亡くなったおばあちゃんが残してくれた"防災袋"が出てきたんです。中には簡易カイロもたくさん入っていたので、早速ご近所に配りました。
あの日は夕方から雪が降ったので、わずかな暖であっても、とても喜ばれました。もちろん私も母も"おばあちゃんありがとう"と何度も何度も感謝しました。
震災後は、親戚や親しい知人などの連絡先となる電話番号などを、小さな紙にメモしてサイフの中に入れ、常に持ち歩くようになりました。
…おばあちゃんの気遣いに助けてもらってからは、悔いを残さないためにも"思ったらすぐやる"ことを実行しています。
こういうのを読むと、ちょっとの手間なら厭わずやっておこう、という気になりますね。
震災の前に知っておけば良かったと、今でも悔やんでいること
(神戸市 70代 男性) 平成7年 阪神・淡路大震災
ほんとうにこれを知っとけば良かったというのはね、今で言う救急法の知識ですね。
当時17歳の女の子が助け出されて、50代後半に近いおばちゃんが一生懸命人工呼吸をやっていて、私も手伝って、その子が一度は息を吹き返したんです。
そこで私は、「息吹き返したからこれで大丈夫や」と思い、「あと、お願いします」と言ってその場を離れました。とにかく、他にも助けなければならない人がたくさんおったから。
でも、後で、その子が数時間後に窒息で亡くなってしまったということを聞きました。救急法の「気道確保」とかを知っていたら、口あけて、口の中に詰まっている土を取り出してジュースでも探してきて口をゆすいであげていたら、あの子は助かったかもしれないという思いがずっと残っています。
救命法については各地の消防署で講習が行われています。例えば東京都にお住まいの方は下記のページで講習について調べられます。
ラジオ、ラジオ、ラジオ!
災害時には物資だけではなく、情報も不足します。そんなとき頼りになった、という声が多いのがラジオ。「あまちゃん」にでてきた「北鉄」のモデル、三陸鉄道の職員の方の体験談です。
宮古市 40代 男性 鉄道会社職員
三陸鉄道の北リアス線で列車を停車させてから私が得た情報は、久慈で大きな地震があったこと、停電になっていること、何分か後に3メートルの津波が来るという、その3点以外は何の情報もありませんでした。
…お客様に情報を何も出せなかったことも苦しくて、「やっぱりラジオでもあれば」と思い、早々にラジオを買って持ち歩き、2台目は手回し充電式にしました。
会社でもラジオの導入を決めましたが、列車にも発信機能がある災害時優先携帯電話や衛星携帯電話を備え付けられればと思います。
ラジオは全国区のテレビとは違い、地域ごとの細かな情報を流してくれます。ラジオがあるご家庭は、電池が切れてないか、電池の予備は買ってあるか、確認してみてはいかがでしょう。スマホやタブレットはあるけどラジオは持ってないという方は、この際、一台でも買っておいてはいかがでしょうか。
「津波てんでんご」
気仙沼市 50代 男性 市役所職員
津波のある地域には、“てんでんこ”という言葉があります。まずは、自分の命が大切です。てんでばらばらでもいいから、とにかく逃げようという教えです。これをもっと徹底しておけばよかったと思っています。
(釜石市 震災当時小学4年 男子)
…避難場所となっていた近くの高校へ避難しました。後から母さんが来たけど、「父さんはまだ来ていない」と言われました。ぼくは父さんや家がどうなっているのか気になって、津波を見に行こうとしたけど、母さんに「あぶないから行かないで!」って言われてやめました。
…やっと3日後に父さんが避難場所に来ました。家族がバラバラに避難してきて、なんて言うか、よく教わっていた「津波てんでんこ」だったなと思います。
「てんでんこ」という言葉は家族で覚えておいてもいいんじゃないでしょうか。併せて、合流地点になる避難場所の確認や、災害伝言ダイヤルの使い方も確認しておきたいものです。
ほか、資料など
一日前プロジェクトのサイトには、他にも多数のエピソードが収録されています。
同ページに「減災パンフレット」のほか、消防庁の「防災マニュアル」を併せてお勧めしておきます。
少なくとも、地震対策でやっておいて間違いないのは、家具の固定や配置の見直し、扉ロックの設置などでしょう。特に寝床周辺は要注意です。具体的な方法は、静岡県のウェブサイトにある「家具の地震対策」にできる限り倣うのが確実だと思います。(ほぼ同内容のpdf版)
他にも、ネットで今すぐお住まいの「○○市 ハザードマップ」「○○市 避難所」等で検索し、家族でいざという時の避難場所と合流地を確認しておくのもいいでしょう。
災害緊急ダイアルの使い方も大事です。各携帯電話会社のページで確認してみましょう。
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いずれも、そこまで時間がかかる作業でもないので、この際、一息にやってしまってはどうでしょう。次の災害の一日前は、今日かもしれないのですから。