リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

南海トラフ地震に備えて何を準備しておけばいいのか

「南海トラフ巨大地震」は広範囲におよぶ大地震と津波

次の巨大地震として、特に警戒されているのは「南海トラフ巨大地震」です。最悪の規模で発災すれば、関東、東海から近畿、四国、九州までの広範囲及ぶ巨大地震になると予想されています。

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また、津波についても、10メートルを超える津波が広域で発生する恐れがあります。

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(図2点の引用元:気象庁「南海トラフ巨大地震の震度分布」)

なお、南海トラフ巨大地震は、千年に一度またはそれ以下の確率で起こる、考え得る限り最大の規模を想定したものです。

しかし東日本震災のことを思えば、起こる頻度が千年に一度であろうとも、考え得る限り最悪を予想して備えるのが最善でしょう。

南海トラフ巨大地震 そのとき何が起こるのか(動画)

内閣府の広報動画では、想定される発災時の状況を動画で説明しています。南海トラフ地震の予想地域にお住いの方は、ぜひ一度ご覧になることをお勧めします。また、一般的な防災情報も含まれるので、そのほかの地域の方もご覧になって損にはなりません。他の類似の動画と比べて、いたずらに恐怖を煽るような表現がなく、淡々とした冷静な作りなのでお勧めです。(なお、この動画には、東日本震災の時の映像も含まれています)


【南海トラフ地震対策編】全体版

この動画の後半部では、南海トラフ地震に備えるために色々な対策が推奨されています。過去の災害で被災された方の経験談を交えつつ、それらの防災、減災に有効な対策を紹介します。

なお、以下の画像と体験談は、度々ご紹介している「1日前プロジェクト」からの引用です。同プロジェクトは、被災された方から「もし災害の1日前に戻れるならこんな備えをする」等の体験談を集め、その数多くの小さな物語を保存し、伝えていく企画です。画像および体験談は使用自由となっています。

住宅の耐震化

第一の対策は、日頃から住宅の耐震化を行うことで、建物の倒壊を防ぐことです。阪神大震災では、木造住宅を中心に多くの家屋が倒壊した映像が、全国に衝撃を与えました。たとえすぐには倒壊を免れても、平成19年能登半島地震ではこのようなエピソードがあります。

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余震のたびに危険度が増していって、このあたりで有名な築100何十年の旧家もつぶすことになりました。古いハリなどは一つひとつバラし、うるしを塗った黒塗りの柱なども再利用するそうです。けど、残念でもったいないなと思います。

家を建てかえるとしても半年以上かかるし、莫大な費用とその間の不自由な思いを考えれば、事前に平時から家が倒れないように補強した方がいいんじゃないかなとつくづく思いました。

「建てかえるより倒れない家にする」 : 防災情報のページ - 内閣府

家具などを金具で固定

建物が倒壊を免れても、倒れてきた家具によって怪我をしたり、命を奪われたりする恐れがあります。阪神淡路大震災の体験談をご紹介します。

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小さく揺れかけたような気がして目が覚めて、「地震や」言うて、布団の上に座ったとたん、ミシミシ、バリバリ言い出したから、「これはもうあかんで」と思ったとたん、タンスが全部倒れてきました。

女房に、「どないや」と声をかけたら、タンスの下から「大丈夫」と言う返事。…重たいタンスをやっとの思いで動かして、下敷きになっていた女房を引っ張り出しました。

「どうもないか?」と声をかけたら、「どうもないわ。あんたが上に乗ってたのかと思っとった」と冗談言ってくれたので、ホッとしました。

「妻が家具の下敷き」 : 防災情報のページ - 内閣府

 このエピソードでは幸いにも無事にすんだとのことですが、重い家具が頭部に当たったり、あるいは下敷きになって身動きが取れない中で地震後の火災に見舞われたりする恐れもあります。

家具には転倒防止のために固定を施すこと、特に寝室には背の高い家具は置かないことが大事です。

津波からの避難場所の確認

津波の恐れがある場合、迷わず高台に避難することの重要性は、東日本震災で広く知れ渡りました。生活圏内にある避難場所、津波避難ビルなどの場所を、あらかじめ確認しておくことが大事です。

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私の住む地域では、地震や津波の可能性は早くから指摘されていました。でもまさかあんなにも大きな規模の津波が来るとは思ってもいませんでした。

…地域の電柱に、避難場所であるコミュニティセンター(コミセン)の場所が矢印で示されるようになったのは震災の3、4か月前だったと思います。毎日見るこの看板のおかげで、いつしかコミセンの場所を記憶していました。震災当日はこのコミセンに向かって必死で逃げました。どこに逃げればいいか、知っていたから迷わなかった。助かったのはあの看板のおかげとも思っています。

コミセンに着いてからもしばらくは余震に震えていました。そして「家がつぶされるー!」という夫の叫び声を聞き、あわてて外に出たんです。すると沿岸部の松林の上まで、真っ黒な波が上がっていました。波はみるみる家や車を飲み込んで、そこまでは来ないだろうと私たちが一つの目安にしていた国道6号線をも軽々と越えました。本当に怖かった。でも、命があって本当によかったです。

予想もしなかった巨大な津波~毎日見ていた看板で命助かる~ : 防災情報のページ - 内閣府

防炎カーテン等、火災対策

地震のあと、家屋から火災が発生して燃え広がることで、被害が拡大してしまいます。これを防ぐためには、それぞれの家で感電ブレーカー、防炎カーテン、消火器などを備えておき、火事にも備える必要があります。

最低3日、できれば7日分の水と食料の備蓄

災害後は、流通が麻痺し、水や食料にも事欠くことが予想されます。避難所に避難しても、十分な量の支援物資が届くには日数がかかります。そのため、過去の災害でも、備蓄の重要性を説いている体験談を数多く見つけることができます。

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一人暮らしの寮住まいのため、普段は自炊を全くせず、毎日の食事は外食とコンビニで冷蔵庫の中はカラ状態が当たり前でした。

田舎の両親に物資の発送をお願いしようとしましたが、震災発生直後は、宅配便も動かなかったため支援物資も届かず、スーパーもコンビニもダメ・・・。大変な思いをしました。

今回の震災で食料の大切さを感じました。

もし一日前に戻れるなら、缶詰等の食料を買っていたと思います。

「備えのない一人暮らしを反省」 : 防災情報のページ - 内閣府

特に、乳幼児のいる家庭や、食べられる食事に制限がある方は、事情に適した備蓄が重要です。この観点から、2019年3月11日から、日本でも乳幼児用の液体ミルクが発売されました。 

災害用簡易トイレ

水洗トイレが使えなくなることが考えられるので、災害用簡易トイレがあると助かります。トイレくらい、とは言えません。次のエピソードでは、ゴミ袋やペット用品を使って簡易トイレを自作した体験談が語られています。

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自宅のトイレにゴミ袋を敷いて用を足す簡易トイレを作りました。これは近隣の高齢者の方から「暮らしの知恵」として教えていただいたものです。この簡易トイレのおかげで、いちいち階下にある外の共有トイレにも行かずに済みました。

しかし、最近は皆水洗トイレを使い、老いも若きも消臭に気遣うような生活です。水洗トイレに慣れきった私たちにとっては、自分の汚物であっても我慢がなりませんでした。団地の自治会で、非常時用の消臭凝固剤をストックしていましたので、これを震災直後に各戸に配布しました。しかし、これも底をついてしまった。何しろ、3週間も下水道が使えない状況でしたから、そこまでの備蓄は自治会でも想定していなかったのです。

消臭の決め手はペットのトイレマット : 防災情報のページ - 内閣府

 また、おむつを必要とする場合は、その備蓄と持ち出しがもちろん必要です。

 

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民生委員の私には気になる人がいました。近所のちょっと頑固者の女性。…寝室の窓をたたき、声をかけました。「今日だけは私を娘と思って言うことを聞いてね」と言うと、だまってうなずいてくれました。

夜になって帰宅した家族に女性を引き渡したのですが、それまでの間、すごく苦労したのがトイレ介助でした。その女性が介護用のおむつを使っているのは知っていたのに、私が持ち出し忘れたのです。

「災害時に脱出するときは介護用品を必ず持ち出すこと」。これが今回の教訓です。

96歳女性を救出するも、おむつを忘れて一苦労 : 防災情報のページ - 内閣府  

帰宅困難者のための備蓄

以上は、個人で備えておきたいことです。一方、企業などの施設でも、交通の回復まで、帰宅困難者を一時滞在に備えた備蓄が推奨されています。東日本震災で帰宅困難者を受け入れた大学職員の方は、このように語っています。

地震発生後に池袋駅の近くを通ると、泉から水が湧き出すように人が溢れているのを目にしました。やがてその人々の一部は、我々の大学で受け入れることになります。

…トータルでおにぎり2600個、水3000本、クッキーなど1500袋を配りましたが、奪い合いもトラブルも起こらず、不満を言う人もいませんでした。

…今回は様々な偶然が重なって上手く対応できましたが、次はどうなるか分かりません。インフラが切断されたら、または一晩ではなく二晩、三晩と続いたら、そう考えての対応も今後、考えなくてはいけないのかもしれません。

「帰宅困難者受け入れへの不安」 : 防災情報のページ - 内閣府

 都市部に大きな揺れが襲った場合、東日本震災の時の東京よりも交通の回復が遅れ、帰宅困難者がずっと各地の施設に滞留する可能性もあります。公共施設だけでなく、企業も含め、色々な施設に備蓄があったならば、大きな助けになることでしょう。

 

以上、推奨されている減災のための対策について、過去の災害での体験談をまじえてまとめてみました。体験談の引用元である「1日前プロジェクト」には、他にも火山や雪害を含め、多くの体験談が載っていますので、ご一読をお勧めします。そして、行動に移していきましょう。