リアリズムと防衛ブログ

防衛ってそういうことだったのかブログ。国際関係論や安全保障論について、本の感想などを書いています。

イギリスの核戦略

イギリスの核戦力は、アメリカとの同盟を補完するもの、と位置づけられている。

イギリスは1950年代から核武装している。だがその核戦力の数はロシアやアメリカから大きく劣る。核兵器の数が非対称なのだ。これは大きな議論を招いた。

少ない核兵器はかえって危険

核兵器による相互抑止は、どちらが先に核を撃ったとしても、双方が全滅する、という状態(相互確障破壊:MAD)から成り立っているとされる。某大臣が発言したように「核を抑えられるのは核だけ」なのだ。

だが、たとえ核武装したとしても、少数の陸上配備型核ミサイルしか持てないのでは、かえって危ない。中途半端な核武装は、相手に先制核攻撃のインセンティブを与えてしまうのだ。

イギリスが少数の核兵器を、ロシアが多数の核兵器を持ったとする。

  1. イギリスは全ての核ミサイルで先制攻撃をかけても、ロシアの核戦力を全滅させられない。核反撃でイギリスの方が壊滅する。
  2. ロシアは先制核攻撃をかけることでイギリスの核を全滅できる。

以上のように仮定した場合、イギリスは核武装によってかえって核攻撃を受けるリスクが高まる。なぜなら情勢が緊迫した場合、ロシアは「先に撃ってしまえば、無傷で済む…」という誘惑にかられることになる。イギリスから見れば、これでは何のための核武装やら分からない。

アメリカの核とのリンケージ

そこでイギリスは独自の核戦略を構築した。自国の核をアメリカの圧倒的な核戦力とリンクさせる方法だ。

イギリスはアメリカに核攻撃にも使用する基地を提供し、強固な同盟を維持した。アメリカの対ロシア報復戦力の一翼を担うことで、結果的に、イギリスの核兵器もまたアメリカの核兵器と一体になって抑止効果を発揮する。つまり、イギリスとロシアを1対1で考えれば非対称だが、イギリス+アメリカ対ロシアで考えれば対称になる、ということだ。

また、イギリスは戦略原子力潜水艦(核ミサイルを搭載した潜水艦)を導入することで、核抑止力を強固なものにした。戦略原子力潜水艦の核ミサイル(SLBM)は「第二撃」の核兵器だ。敵から先制核攻撃を受けても、海中に潜む潜水艦は生き残る。生き残って核反撃(第二撃)を行える。この存在によって敵は第一撃をためらう。(だって、先制しても敵の核戦力を全滅できず、核反撃を受けることが確実なのだから)

これらによってイギリスの核兵器は、敵に核先制のインセンティブを与えるのではなく、きちんと核抑止力として機能するようになったとされる。

参考
弾道ミサイル防衛入門―新たな核抑止戦略とわが国のBMD