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ではいっそ、北朝鮮の核保有を認めてやるのはどうでしょう?
考えてみれば北に「核を持つな」と言っているアメリカは世界一の核兵器大国です。ロシアや中国も核兵器を持っています。なのに北朝鮮にだけ「持つな」というのは不公平な気もします。
ですが北朝鮮の核保有を認めることは、世界中に核兵器と弾道ミサイルが拡散することにつながり、世界を多いに危険にします。
北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルをブラック・マーケットに売る
2003年、リビアが核兵器の開発を放棄してIAEAの視察を受け入れた時、ブラックマーケットの存在が明らかになりました。複数の途上国がひそかに結びつき、あちらからはミサイル技術、こちらからは核物質の遠心分離機と色々な資源を交換する闇市場が存在したのです。
北朝鮮は、パキスタンやイラン、シリアといった国々の核開発でも、一定の役割を果たしてきた疑いが指摘されている。核不拡散条約(NPT)を揺るがしてきた国際的なネットワークの中で、北朝鮮の影が常にちらついてきた。米国などからは、核技術拡散への懸念の声が出ている。
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この闇市場は世界の想像を超える大規模なものでした。少なくとも7〜8ヶ国が参加し、技術供給会社が存在する国を含めると11ヶ国*1を結ぶネットワークでした。そこから少なくともリビア、イラン、北朝鮮の三ヵ国が恩恵を受け、弾道ミサイルや核兵器の技術を手にいれていました。
この闇市場において、北朝鮮は既に弾道ミサイル技術をイランに売った疑惑が濃厚です。北朝鮮の核保有を認めれば、このような闇市場を通じてさらに多くの国々に弾道ミサイルと核兵器がばら撒かれる危険性があります。
すれば核拡散防止体制は明確に破綻し、核戦争がどこかで発生するリスクが著しく高まります。それはあたかも、大勢の子ども達に機関銃を与えるようなものです。
子どもが機関銃を持つ世界
アメリカ、フランス、ロシアといった大国は国際社会の秩序に組み込まれ、多くのしがらみを背負っています。それゆえに核兵器の使用には多くの制限がかされています。大国にとって核兵器は「使えない兵器」なのです。
それに対して失うものが少ない小国、特に独裁国家にとって、核兵器の使用は相対的に敷居が低いといえます。そういった国は、自国の体制が危険にさらされれば被害を度外視して軍事的冒険にでる場合があります。
例えば北朝鮮の金正日総書記は「北朝鮮が滅びるくらいなら、世界を消してやる」と発言したことがあります。独裁国家にとっては世界の秩序や祖国の安全より、自分達の独裁体制を守ることが優先課題です。かつ意思決定プロセスが不明瞭なので、時として突飛な行動*2)))をとります。
いわば気の短い子どものようなもの。そんな子どもが機関銃を所持しているとしたら、隣近所の住民にとってたまったものではありません。まして、機関銃が悪がき仲間たちにも広まったら、たちまち町は無法地帯になるでしょう。
今回の核実験がそんな結果につながらないよう、安保理では制裁決議がなされることと思います。
追加措置として考えられるのは、北朝鮮政府関連団体を対象とした金融制裁の拡大。同国の核・ミサイルプログラムへの支援が疑われる企業が、ブラックリストに追加されるとみられる。
情報BOX:北朝鮮への安保理決議、考えられるシナリオ | Reuters
とのこと。今後の動向が注目されます。核拡散防止体制の護持ができれば最も望ましい結果です。それはひとえに、北朝鮮に対して効果的な封じ込めができるかどうかにかかっています。この場合は地理的な封じ込めではありませんが、北の意図を止める一線を引けるか否かが重要です。
…要するに封じ込め政策は、帝国主義国に対して「ここまではよし。だがこれ以上はだめだ」と伝えることによって、その線を越えて進むことは事実上確実に戦争を招くのだと警告するのである。
p66 国際政治 権力と平和