リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

市長、尖閣諸島へゆく。

沖縄タイムスによれば、石垣市の中山市長が、尖閣諸島への上陸を計画中です。尖閣諸島は法律上、石垣市の市内にあります。 市長、尖閣諸島へゆく 石垣市の中山義隆市長や同市議会議員らは26日、尖閣諸島を行政区に持つ自治体として、同諸島への上陸視察の…

なぜ今、武器輸出が必要なのか

年末までに武器輸出の規制緩和が決まりそうです。日本はこれまで「武器輸出三原則等」によって武器の輸出を厳しく自主規制してきました。しかしここにきて緩和への動きが急速に強まっています。いったい何故でしょうか?? 緩和についての誤解 最大の理由は…

中国海軍は何を考えているのか 建軍から未来まで

東アジアで軍拡が進んでいます。発生源は中国、特に海軍です。2010年8月4日のニューズウィーク紙は「中国海軍増強があおる東アジア軍拡」と題して、こう論じています。 東アジアは海軍増強競争の真っただ中にある。 日本は36年ぶりに海上自衛隊の潜水艦を増…

なぜ「中国の奇襲」に日本が巻き込まれるのか

本書「中国の奇襲」はアメリカの国防総省、および米中安全保障調査委員会がそれぞれ提出したレポートの翻訳です。わりと重要な本なのですが、アマゾンにレビューが一件もついていないなど、ほとんど注目されなかったようです。本書の意義は訳者があとがきで…

「中国の漁船は中国軍の手先」とNYTが報道

ニューヨークタイムスで、中国が海洋権益を広げるために民間船を活用している件が報道されました。中国は漁船を「海上民兵(maritime militia)」にして送り込んでいる、というのです。(「Chinese Civilian Boats Roil Disputed Waters」2010/10/5) 民間船の活…

自衛隊を出すばかりが防衛ではない

尖閣沖事件から始まった日中の係争は収束しつつあります。ただし、これで尖閣諸島問題が決着したわけではありません。今回のような事態がいつか再発することは大いにありえます。 今回のような係争があると、日本側でも相手国側でも、インターネットを中心に…

民間船舶を徴用する中国軍の上陸作戦

中国は自国の海洋権益を広げるために、漁船を先駆けとして活用していることで知られています。先の尖閣沖事件、その3ヶ月前におこったインドネシアにおいてもそうでした。もと外交官の茂田氏はこう分析されています。 中国のこういう場合のやり方には一つの…

妥協のやりかたを間違えた尖閣問題のこれから

引き続き、尖閣諸島沖での衝突事件から始まった一連の外交問題についてです。 先の記事で触れたように、今回の件はもともと武力衝突に発展する可能性が極めて低い、外交案件でした。よって日本側が妥協し、船長の身柄を中国に返すことは、どこかの時点でやら…

船長の釈放について

手短に要点だけ書いておきます。尖閣諸島沖で不法操業の上、巡視船に衝突した件で拘留されていた中国漁船の船長が釈放されることになりました。那覇地検の判断です。 沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の領海内で、海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、…

尖閣諸島の死角

昨日公開した記事「尖閣諸島沖での日中対立について」は、はてなブックマーク、ライブドアBLOGOS、Yahooトピックスで大きなご反響を頂きました。ありがとうございます。 今回は補足的に尖閣諸島の防衛について1点だけ補足です。尖閣諸島の警備体制について…

尖閣諸島沖での日中対立について

尖閣諸島沖での中国漁船と海保巡視船の衝突事件について、遅まきながら見解をまとめておきます。 この事件は単なる衝突事件にとどまらず、事件の背景となっている尖閣諸島の領有権をめぐる日中対立につながっています。 今回のいきがかり上、中国は強硬な態…

反攻作戦ストロングハート ―ヨム・キプール戦争の決着

このシリーズでは1973年に起こったヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)をとりあげています。今回は戦争を決着に導いたイスラエルの反撃作戦をとりあげます。 ヨム・キプール戦争の展開 ヨム・キプール戦争はエジプト・シリア軍による奇襲ではじまりました。…

サムライの武器はどう変わったか? 「騎兵と歩兵の中世史」近藤良和著

騎兵と歩兵の中世史 (歴史文化ライブラリー)posted with amazlet at 10.08.06近藤 好和 吉川弘文館 売り上げランキング: 133318おすすめ度の平均: 中世武器・甲冑好きの必読書 研究者にオススメAmazon.co.jp で詳細を見る サムライ、武士の武器といえば何と…

黄海でアメリカと対立する中国

アメリカと韓国の合同海軍演習に対し、中国は盛んに演習を繰り返して対抗姿勢を示しています。 黄海での米韓合同演習 先日もこのブログに書いたことですが、米韓軍による合同演習に中国が反発しました。演習は天安沈没事件への対抗として、北朝鮮を念頭に於…

事故か、事件か? ホルムズ海峡で日本のタンカーに爆発

商船三井が保有するタンカー「M・STAR」がホルムズ海峡で爆発事故を起こしました。原因はまだ不明ですが、何者かに攻撃された疑いがあります。もしこれが波や過失による事故ではなく、何者かによる攻撃事件だったとしたら? 日本を含む多くの国にとって…

中国とアメリカは「海のナワバリ」を争う

犬を飼ったことのある人なら、飼い犬が人様の犬に吠え掛かって、悩まされたことがあるはずです。散歩中に他の犬とすれ違うとき。あるいは他の犬が自宅前の道を通るときに。犬には縄張り意識があるので、「自分の縄張りに不審な侵入者が来た」となればワンワ…

魚や離島をめぐる戦い

もしも将来、どこかの国が日本に戦争を仕掛けるとしたら、どういう光景が想像できるでしょうか? 大量のB29が飛来して、東京や大阪を焼き、果ては核爆弾まで落としていく―というのが太平洋戦争の末期でした。北海道に数千、数万人の陸軍が上陸してくる―とは…

「安全保障のポイントがよくわかる本 ―安全と脅威のメカニズム」

安全保障のポイントがよくわかる本―“安全”と“脅威”のメカニズムposted with amazlet at 10.06.28防衛大学校安全保障学研究会 亜紀書房 売り上げランキング: 46330Amazon.co.jp で詳細を見る 今日は本の紹介です。当ブログでは以前に防衛・安全保障について新…

そろそろトップ絵(?)が欲しい → 探す → らきすた

日記です。 タイトルに画像を使っているブログって、かっこいいですよね。ああいう画像のことを何というのか分からないのですが――トップ絵? タイトルバナー? とにかくそういうものを、うちのブログにも近いうちに着けたいです。 そこで作り方を調べてみた…

インフラとしての安全保障

大和総研のウェブサイトに安全保障について述べたコラムがありました。企業の経済活動と、国家や軍事力による安全保障との関わりについて、大和総研の中里氏が書いたものです。 安全保障はもっとも基本的なインフラ 経済活動の土台には安全保障が欠かせない…

抑止力の正体

抑止力、なんてものは本当に存在するのでしょうか? 昨年来、抑止という言葉は話題になりました。鳩山前総理は沖縄を訪問したとき「学べば学ぶほど…(沖縄の海兵隊は他との連携のなかで)抑止力が維持できるという思いに至った」と述べました(時事5/4)。新…

普天間問題と政治主導のために足りなかったもの

鳩山内閣は倒れ、菅内閣が発足しました。政治とカネの問題もありますが、普天間の移設、つまり安全保障の問題が大きな原因となって内閣が倒れてしいまいました。こんなことは滅多にありません。岸信介の安保改定以来の出来事ではないでしょうか。 新内閣は大…

「君主論」 ニコロ・マキアヴェッリ 

マキアヴェッリが「君主論」を書いたとき、彼の問題意識は「新しい君主はいかにあるべきか」ということでした。 当時のイタリアは「油断をすればすぐにも崩壊しかねない脆弱な政治的支配関係」ばかりの不安定な政情にありました。そのために政治的に安定した…

沖縄と核兵器

日本に返還される以前、沖縄にはアメリカ軍の核兵器がおかれていました。それについてざっとまとめ、現代あるいは未来において沖縄に米軍の核兵器が配備される可能性があるかどうか、吟味してみましょう。 沖縄にあった核兵器 戦略核を沖縄に置く必要性は激…

北朝鮮による韓国艦『撃沈』事件と日本

韓国の哨戒艦「天安」が沈没した事件についてです。余り時間がないので、今回は手短に、ざっと。 沈没原因は魚雷、犯人は北朝鮮で確定 20日、ようやく正式な発表があり、この沈没が北朝鮮の魚雷攻撃による「撃沈」であったことがはっきりしました。 韓国軍…

「歴史のライム」 中国はドイツ帝国の轍を踏むか?

今回は論文の紹介です。「History Rhymes:The German Precedent for Chinese Seapower」は、現代中国とドイツ帝国の比較論です。著者のJames R.HolmesとTOshi Yoshiharaはアメリカの軍大学の研究者です。 この論文はアメリカの対外政策研究財団「Foreign Pol…

普天間返還が決まる経緯について江田氏の回想

みんなの党所属の衆議院議員である江田氏が、普天間基地の移設が決まるまでの経緯を書いていらっしゃいます。無論、今年の話ではなく、90年代に普天間返還が合意されたときの話です。江田氏は当時、橋本総理の首席秘書官として官邸にありました。時節柄、…

普天間および在沖米軍について韓国紙の論評

とりあえずメモ。4月28日、東亜日報より。 日本本土の米軍と違って、沖縄駐屯の米軍は日本の防衛に限らず、アジア太平洋地域の防衛まで担当している。韓半島有事の際に、米軍の第1次発進基地になるのも沖縄だ。最先端航空機が配備された嘉手納空軍基地か…

普天間、善意による混迷

鳩山総理が沖縄県を訪問されました。政府案(辺野古沖プラス徳之島)への理解と協力を求めるべく、知事、市長、市民らと会談されたそうです。テレビ、新聞らで既に数多くの報道がなされています(産経5/4・読売)。 鳩山首相は「辺野古の海をきょう訪れ、改め…

中国との対し方  高坂正尭著「海洋国家日本の構想」

戦後日本の針路をどう考えるべきか。それを世に問うた名著が高坂正尭先生の「海洋国家日本の構想」です。これは冷戦中に書かれた本なのです。しかし今これを読み直せば「なんと、これは今現在の問題じゃないか」と思わせる記述が多くあります。 「東洋の離れ…